【 あきた全国舞踊祭についての所感 】
加賀谷 香
 舞踊家
(東京都)
肖像

第43回あきた全国舞踊祭、厚い時代の扉にプンッと風穴が開いたようなとても印象に残る会となりました。エキシビション公演がそれをものがたりました。コンクールのエキシビションという意味合いを超えて、ダンスならではの様々な可能性や魅力に溢れた作品がラインナップ、観客の喜ぶ素晴らしいダンス公演でありました。
グランプリを受賞された「それでは、」中村渚央さん。「型」の無いはずのモダンダンス、コンテンポラリーダンスですが、コンクールではなかなか観ることの出来ないまさに独自の演出振付で描きたいものを見事に表現されていました。まるで短編の無声映画を観ているように4分間審査を忘れて魅了されました。表彰式インタビューでの「人の心に触れるような作品を踊りたい」と飾らない言葉で語られた姿に胸を打たれました。勿論ダンス力の高さも合わせて素晴らしいグランプリ作品でした。
コンクールでのこのような作品の受賞が、シニアの皆さんはもちろんのことジュニア1部2部の皆さんにとってもそして振付指導をされる先生方にとってもきっとこれからの指針となり、魅力あるダンスの道への誘導を期待するとともにとても希望的な気持ちになりました。
最優秀群舞賞を受賞された「綴る」のお二人においては、多勢の群舞ならではの緻密な構成とその迫力、シンクロの見事さなど衆を制して、個々の圧倒的な熱量で力作を見事に披露されました。
点数が全てではないことは勿論ですが、コンクール仕様のパターン化された振付や衣装の作品も多く目についたことは少し残念に感じました。
同じ高得点でも、高評価を得てのそれと、減点の理由がなくてのそれとでは大きく意味合いが違うな、とつくづく点数を付けることの難しさを感じた会でもありました。


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Update:2025/01/02  

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