【 第42回ミルハスでのあきこん 所感 】
川村 泉
舞踊家
(秋田県)
肖像新しい劇場ミルハスでのコンクールでした。楽屋からホワイエに出ると戻られないという厳しいセキュリティーに悩まされましたが、無事済んで感謝申し上げます。

ジュニア1部は新美佳恵門下が上位に並びました。踊りを究める強い精神~今は亡き黒沢、下田先生の流れが息づいていることを感じました。とは言っても舞踊は一生の物ですから、結果はさらりと流しながら、それぞれのペースで踊りの魅力を味わってほしいです。全体的にレベルは高く、上位には行けなくても子供らしい可愛い作品に心温まりました。

ジュニア2部は少し大人に変化していき、表現テーマの「種」を踊り手自身が持っている必要があります。振付者と踊り手がテーマを明確に共有している作品がタッチしました。上位は別々の指導者で、作品も曲も衣裳も全く違いますが、なぜか同じ花に感じました。この人たちが成長し、独自の花に行き着くまでのダンスの旅…興味深いです。

シニア部…ここでは「そのテーマを伝えるための自分だけの動き」があるかどうかに注目しています。上位の3作品は個々の表現や動きに特色があり、楽しめました。グランプリの内田さんは日本のコンクール特有の曖昧なモダンダンス、その価値をどう受け止めるかなのですが、何もない背中に刺青を想像させる瞬間はしっかりと記憶に残りました。作品に「おへそ」があるかないかが、重要だと思います。

群舞部…この部門の点数をつけるときは、「エキシビションで観客に見せるとしたら」を基準にしています。ソロ部門の上位の方々も究極のテクニックを披露するわけなので、テクニック以外のsomethingが必要です。その点、今回の群舞はレベルが高く、エキシビションで見せたい作品が沢山ありました。
1位の「ため息」をテーマにした作品は、初めの部分でミスをし、リアルな溜息と怒りがテーマを新鮮にしました。2位の日本体育大学はサグラダファミリアという壮大なテーマに31名で挑戦し、次々に人々が積み上がる体育的な熱量で圧倒しました。3位あきたこまち賞の新潟医療福祉大学の作品では、振付者の導きで骨太でありながら細部まで行き届いた展開に惹きつけられました。

全体を通して、振付は本当に重要で、テクニックを育てる人と振付者と両方が不可欠です。振付者が育つ環境づくりがこれからの日本のダンス界の課題だと感じています。

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Update:2023/01/04  

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