【 第41 回 あきた 全国舞踊祭 モダン ダンス コンクール 所感 】
石原 完二
舞踊家
(京都府)
肖像第41回あきた全国舞踊祭あきた全国モダンダンスコンクールは、2022年9月にグランドオープンを迎えたあきた芸術劇場ミルハス中ホールにて開催された。新しい会館、美しい舞台、その空間に立っているだけで、清々しい風に包まれているような新鮮な気持ちにさせられる。

年々著しいレベルアップが見られるコンクール、今年も質の高い作品が並んだ。小学生の作品に向き合うひたむきな態度は、ひしひしと心に響き、その姿は正にガラス細工のようでもある。後で分かった事ではあるが、ジュニア1部の上位3名は、全て同じスタジオの生徒達であったことには驚かされた。特に1位の幻影を踊った神尾海希、舞台に立った時から本当に幻を見るかの様なその姿。一分の狂いもなく動きを紡いで、ピタッと止まる。なる程これこそが幻の姿を映し出す感覚なのかと感心させられる。

ジュニア2部になると作風の幅が広がり、テクニックの多さ、難しさは勿論の事それぞれの作品の個性、ダンサーとしての個性の輝き、成長していく段階での自己の確立などが見られる競い合いの一番厳しい部とも言える。上位入賞者の点数は、ほんの数点違いでしのぎを削っている。多感な時期にあり、様々に変化していく色々な状態を想うと、創作される先生方の工夫・苦労も大変なものがあろうと思う。

シニア1位に輝いた内田奈央子の刺青。するりと舞台に倒れ込み背中を見せる。その瞬間から刺青を入れたくなる自分の欲求、底知れないほど内に秘めたもの、対峙する刺青師との緊張感をも見せる力作だと思った。特にコロナ禍ゆえか、鬱積した怒りなどを爆発させるような作品も出てきた今回のコンクールにあって、この様な、どストレートな作品が出てくると、見る方にドーンと作品の重力が伝わってくる。

そして群舞部門、1位の Sigh with … ため息をつく。男女の少しのずれからスリリングに動きが展開していき、それだけで気持ちがワクワク、ザワザワとさせられる作品。そして見終わった後に、このため息をつく意味は世の中全体に向けてのため息とも想像できる作品だった。上位に入った作品はどれもその題材が面白く圧倒的な動きによって構築されている力作揃いだった。

第41回あきた全国モダンダンスコンクールを終えて、さらなる参加者が増え、益々盛んになり、繋がっていく事を願っております。

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Update:2022/12/27  

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