【 あきこん所感 】 |
馬場 ひかり |
舞踊家 |
(東京都) |
この度、初めて、〈あきた全国舞踊祭―あきこん〉の審査をさせていただきましたが、まず、秋田は元気があるなという印象。ワクワクしながら、楽しい3日間を過ごしました。コンクールに出場した皆さんの踊りが素晴らしいだけでなく、エキシビジョンや、前夜祭である公演〈AIRA―會ら〉、そして、workshopまで、ダンスを愛する人たちが集まって行うイベントだからだと実感。他の舞踊コンクールとは違う、主催、制作の皆様の情熱、ダンサーを育てる愛を感じました。コンクール出場者のレベルの高いことには驚きましたが、暖かく見守る雰囲気が、コンクールの殺伐とした空気を和らげているような気がしました。劇場も素晴らしい!
ダンスは、確かなテクニックを持ち、表現力の優れたものが、上位に入賞するのですが、やはり、舞踊は、スポーツ競技ではなく芸術です。テクニックがあっても、作品を踊るパフォーマンス力がなければ、動きだけでは、ダンスは無味乾燥なものとなり、人の心を打ちません。身体で表現する舞踊は、心とカラダの変容が動きとなって、その一瞬一瞬はその時生まれ、消えてしまうものですが、その一瞬の連続を全身全霊で踊りきる、パフォーマンス力を持ったダンサーが、優れたダンサーだと言えます。日々の身体トレーニング、練習が必要なことはいうまでもないですが、日々の暮らし方、感じ方、考え方全てが、ダンサーを作ります。そのために、日頃から感性を研ぎ澄まし、ダンサーの前に、心の豊かな人間であることが大事だと思います。私の言うパフォーマンス力というのは、表現力プラス、それを観る者にアピールする力です。身体の中から溢れ出るエネルギー、静と動の対比から生まれる緊張感、大胆さと繊細さを持つダンスは本当に美しいと思います。形態美だけでない真の美しさを放つパフォーマンスには説得力があります。 このあきこんで感じたことは、上手な踊りがたくさんある中で、個性のあるダンス、オリジナル性のあるダンスが、心に残ります。 同じようなテクニックが出てくる中で、一捻りある、ユニークな動きに、ハッとさせられルことがあります。それが芸術性ではないでしょうか。音楽や衣装も、影響します。 その全てがダンスの要素となりますから、指導者は、ダンサーに合った題材で、個性を引き出してあげるダンスを創ることが大事です。 ダンサーは、動きと動きの繋ぎが雑になることなく、丁寧に踊り、習った動きを、自分のものにして、カラダの中から生まれてくるように踊ることが大切です。若いダンサーには、少し難しいことかもしれませんが、小さい子供でも、作品をきちんと理解して、心から踊っているものは、やはりわかるものです。そして、欲を言えば、もう少し型破りのものが出てくるのを期待します。真面目に、きちんと踊りながらも、どこか、はみ出してしまうようなエネルギー、突き抜けたセンスがあるものが、素敵だなと思います。そのために、自分を磨くことを怠らず、何よりも、ダンスを楽しんで欲しいと思います。 最後に、審査する立場から言うと、点数で優劣をつけるのはとても難しいことで、点数が低かったから劣っているとは限りませんから、賞を受賞した人も、惜しくも良い結果を出せなかった人も、これからもダンスを愛して、勉強を続けてください。 この「あきたこん」から、未来の輝くスターダンサーが、たくさん生まれてくることを願っています。 歴史ある、あきた全国舞踊祭に関わることができ、光栄に思います。 企画プロデュースの川村泉さん、あきた全国舞踊祭実行委員の皆様、ありがとうございました。 |
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Update:2022/12/23 |
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