透明感のある動きの船木こころ
山野 博大
舞踊評論家
(千葉県)
肖像

第三十一回あきた全国舞踊祭のエキシビション公演が、今年も寒い冬の秋田で開催された。このイベントは、一九八二(昭和五七)年から行われているモダンダンスコンクールのフィナーレを飾る催しだ。コンクール各部門の三位までと群舞部門に入ると、もう一度こんどは照明付きの舞台で踊ることができる。その他前年度のグランプリと群舞一位の受賞作品の招待演技などがある。

 コンクールは、シニア一位=船木こころ(グランプリも受賞)、同二位=小室眞由子、同三位=水島晃太郎、ジュニア一部(小学生以下)一位=小野優月、同二位=木元真理子、同三位=松岡あさひ、ジュニア二部(中高生)一位=岸野奈央、同二位=宗像亮、同三位=今井翠。群舞部門は、一位=金井桃枝舞踊研究所(冨士奈津子、林芳美)、同二位=高橋裕子舞踊研究所(高橋茉那、山田聡子、三浦水輝、宗像亮)だった。

 このコンクールでは、他に審査員の選考枠以外の特別の賞を設けている。楽しい群舞の『はらぺこ猫とワイルドマウス』がコンクールを裏で支えるスタッフたちが選ぶ「あきたこまち賞」と今回から新設された「横山慶子奨励賞」の両方を受賞した。横山賞にはもうひとつ、民族色豊かな群舞の『薯童謠(そどんよ)』が入り、エキシビションの舞台で披露された。

 グランプリの船木こころは、二〇〇七年あたりから素質の良さで注目されてきた人だ。直前に行われた十一月の《第二十七回ヨコハマ・コンペティション》で二位に入っている。ここで彼女が踊った『綴りゆく予感』は、透明感のある動きのつらなりが楽しく、誰の目にも今後の急成長を予感させる内容だった。

 このコンクールでは二〇〇九年から群舞部門を独立させている。今回最優秀群舞賞に輝いた『Bonappétit』は、冨士奈津子、林芳美というこれまでのグランプリ受賞者ふたりのデュエット。技術的にはもちろん、内容的にもコンクール・レベルを超える仕上がりだった。同時に披露された昨年のグランプリ受賞者津田ゆず香による『twice born 鈴』と最優秀群舞賞の『yearning to live』(藤井淳子、加藤明志、伊藤有美、水島晃太郎)も内容の高さでは一歩もひけをとらない好演だった。そして最後はイベントの主催者である秋田県芸術舞踊協会による群舞作品『メリーゴーランド』で楽しく締めくくった。これを振付した川村真奈は二〇〇四年のグランプリ受賞者であり、今はニューヨークで活躍中。それを踊った七人の中にもグランプリ受賞者の顔が見え、三十一年にわたる歴史の重さを感じさせるエキシビション公演だった。(2013年1月25日発行、週刊オン★ステージ新聞より抜粋)


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Update:2017/02/23  

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