【 秋田コンクールについての所感 】
山野 博大
 舞踊評論家
(千葉県)
肖像  第38回あきた全国舞踊祭の 《秋田全国モダンダンスコンクール》 は、からだをしっかり鍛えて力強く踊る作品が多かった。日本的な抒情を踊りの中心に置いた作品の多い他のコンクールと、明らかに一線を画した。

 モダンダンスという舞踊のジャンルは、20世紀の初頭に、イサドラ・ダンカンらが、バレエの様式性に反発して、自分の感じたことをそのまま表す自由な動きを中心に据えて舞台を作ったことから生まれた。新しい時代の流れに直ちに反応できる舞踊としてアメリカ、ドイツなどで発展し、世界に広まった。日本では、1920年代に帝劇でローシーが洋舞の技法を教えた頃、それに反旗をひるがえした秋田県生まれの石井漠らが踊り始めた独自の舞踊分野であり、自由な動きを使ったが、バレエの様式性への反発という意味合いは薄い。むしろ日本舞踊の抒情性を取り入れたりして、バレエと両立したポジションにある。そのような歴史をたどる日本のモダンダンスは、時代の流れに敏感に反応するというよりは、日本的な舞踊の一表現として、今に至る。

 しかし、今回の秋田のコンクールのシニア部門の作品は、時代への反応を感じさせるものが多かった。力強く動いて、自分の意思を表現する作品が目についたのだ。

 シニア部門は川村泉門下の岸野奈央 『蜻蛉』 がトップになり、グランプリを受賞した。その舞踊表現の底にあるパワーは、今までの日本のモダンダンスとどこか感じが違う。他の作品でも同じような感じを得た。日本のモダンダンスが時代に敏感に反応しはじめたのかもしれない。若者たちのこれからの動向に注目して行きたい。

> Press71へ戻る ▲TOPに戻る
Update:2020/1/18  

© 2020 akicon.net