『優秀な若者たちの出会いの場「あきコン」』
山野 博大
 舞踊評論家
(千葉県)
肖像

 2014年の「あきコン」では、シニア部第1位の水野多麻紀がグランプリに輝いた。
歴代のグランプリ受賞者の出身地を調べてみたら、東北、関東に集中している。名古屋出身は彼女が初めてだ。
 彼女は、2008年の第27回「あきコン」のジュニア2部(中高生)で第1位になったキャリアを持つ。それ以前から「あきコン」の常連で、着実に成長を続け、それがここで身を結んだのだ。芸術は、努力すれば結果がついてくるというわけには行かない。予想のつけにくい、やっかいな代物だ。そんなことに自分の人生の大事な時間を惜しみなく注ぎ込んで悔いない潔さに、心が洗われる思いを深くした。それを支えてくれたご家族をはじめとする支援者の方々は、結果として日本の舞踊の振興に大きな力を与えてくれたことになる。

 水野多麻紀が踊ったのは自作の『夢を孕んだ微酔』というソロだった。まどろみの間に入り込んでくる夢の思いがけない展開の様子を、緩やかなフレーズの中に素早い動作を挿入してみごとに表現した。よく訓練された肉体が、その微妙な変化を鮮やかに描ききった。

 彼女はまた、最優秀群舞賞受賞の『雨夜譚』を踊った5人(富士奈津子、新保恵、水野多麻紀、鳥海夏椰子、須﨑汐理)のひとりでもあった。ほかの4人の金井桃枝舞踊研究所に所属するダンサーたちと共に、彼女は群舞の最高点にも名前を残していた。昨年の12月に行われた《ダンスっておもしろい!?in 仙台》という公演で、彼女は自作の『伯爵夫人と画壇のグリーンテーブル』を富士奈津子、新保恵と共に踊っている。東京の八王子にある金井桃枝舞踊研究所も「あきコン」の常連であり、ここでの若者たちの出会いが今回の最優秀群舞賞『雨夜譚』につながったものと思われる。名古屋と八王子の若者同士が手をつないで、新しいものを生み出したことは、日本の舞踊の次の展開を期待される画期的な出来事だった。

 シニア部2位は小室眞由子(湯原園子門下)の『place - それでもなお』、3位は渡部悠(川村泉門下)の『ミネルヴァの梟』だった。どちらもすばらしい素質と充分な修練の成果を示した演技であり、今の日本の現代舞踊の特質を伝えるものとして、歴史的に見ても満足の行く内容を有していた。1位の『夢を孕んだ微酔』と共に、今回の「あきコン」の水準の高さを内外に誇示したベストスリーだった。

 ジュニアの1部、2部にも、将来の日本の舞踊界を担ってくれそうな人材を数多く見出すことができた。今後の「あきコン」で、グランプリを目指してがんばってくれることを期待する。

 主催スタッフ陣の親切で手際のよい運営のノーハウ、エキシビション公演で盛大な拍手を送ってくれる観客の皆さんの存在も、1982年以来続けてきた“雪の秋田の熱い冬”「あきコン」の大事な財産だ。


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Update:2017/02/16  

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